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第四話 黒の国へ 戻れぬ旅路

last update Last Updated: 2025-02-18 23:50:14

黒の国への旅立ち 戻れぬ旅路

それから、エリンシアの屋敷では

「あら、エイルはお眠?」

ゆったりとしたソフアですやすやと寝息を立ててエイルは眠っていた。

「ふふ、義兄さま、今日は泊まってゆかれては?」

「そうさな、エリンシア姫、お言葉に甘えよう 有難うエリンシア姫」

「はい、どういたしまして」

そして、それから…。

瞬く間に日々は過ぎ……。

見送られて、羽琴の姫

白の国から、エリンシア姫は旅立った。

「エリンシア姫、叔母様」幼いエイルは涙ぐむ。

「エリンシア姫」「姫様」

優しく多くの人に慕われてた姫

見送る者の中には、多くの涙ぐむ者もいた 。

「どうか、皆様、お元気で…」

「義兄さま、リアン様、どうか、エイル…エルトニア姫をよろしく、お願い致します」

「叔母さまぁぁ」

そして、涙を流す、まだ幼いエイル、エルトニア

少年のリアンは

前に進みでて、金の髪飾りを差し出す。

「エリンシア姫さま、どうぞ、これを…」

「まあ!有難うございますリアン様…あ、そうだわ、これをどうぞ」

そう言って、荷物の中から、小さめの持ち運べる竪琴をリアンに差し出すエリンシア

「私が、以前、姉さまから頂いた物ですが、最近は羽琴しか扱わず、あまり使わないものですから、リアン様も楽器はお好きでしたから」

「そんな、いいのですか?」リアン

「ええ、どうぞ」微笑んで、リアンの手渡す…エリンシア

リアンは、その竪琴を受け取った。

「有難うございます エリンシア姫様」

そうして、集まった皆を見渡して

「叔母様!」

「あっ、エイル、エルトニア」

抱きついてきたエイルを抱きしめて、額にくちずけをして そっと、エイルのその幼い身体から手を放してから

「元気で健やかに ずっと祈っております」

そう言い残して、エリンシアは白の国を去っていった。

今度は幼いエイルをそっと後ろから抱きしめるリアン

「大丈夫、何年かたったら、きっとお戻りになるよ」

「うん、わかりました、リアン兄さま」

鼻を赤くして、まだ少し瞳に涙を残したままエイルはリアンに答えた

だが、しかし

運命は 羽琴の姫君の故郷である白の国への帰還を許すことはなかったのだった...。

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  • 羽琴の姫君…羽琴をつま弾く哀しき姫の願いと流転する悲劇の果て2   第68話 雪山での争い

    国境近くの冬山で…カキィーンキィィェーン、キィィーン…勢い良く、剣が打ち合う音或いは…爆音魔法が雪に覆われた大地、辺りを吹き飛ばす音も響き渡るのだった。 潜伏していた場所を発見されて…3人は追い詰められたのだった。「リュース公!」「私は大丈夫です!セルト殿!」肩の辺りを負傷したリュース公が叫ぶ「かなりの数の巨人族の兵士達に…それに加え意思を封じる魔法の魔具を付けた奴隷兵士達」「魔法を使える者達…主に黒の国から連れて来られた魔法が使える者達ですね、厄介ですね」こちらは…今は私とセルト殿とタルベリィだけタルベリィ殿は高齢で魔法には長けているが…文官猛将の竜人であるセルト殿 本来なら簡単に敵を撃破出来るのだが助けねばならない黒の民達に…何よりもチラリと崖から見下ろす鎧を纏う黒髪の少女黒の王と同じ深紅の瞳をした王女ティンタル  「王女様、ティンタル王女様」「あら、何かしら?命乞いなのかしら?リュース公リジャイアヌス」冷たい表情をして感情を感じさせずに答えるティンタル王女「タルベリィと貴方は人質としてそうね…とりあえず助けても構わなくてよ」「この数の兵士達、魔法を使える奴隷兵士達も居るリジャイアヌス、リュース公 貴方の魔法と剣はなかなかの者、あのアルテシア姫を育てた者でも、この人数よ…老人のタルベリィは戦士としては役不足だわ」「でも…セルト」カッと深紅色の瞳を見開くティンタル王女「だけど…竜人セルトの力は侮れないわねそれに何より、セルトは覚えてないだろうけど…」「幼い少女だった私の目の前で父親の王を殺害私と父王の守護者、竜人のアレルドも…」「母アリアン王妃は兵士達に槍で貫かれた幼い弟も殺された! 私の目の前で!」「……」竜人セルトは当時、意思を封じる魔法の魔具をされあの時の事は当然、覚えていない…寡黙なセルトはただ、無言で立ち尽くす。「まぁ、神達により定められたアーシュラン兄様の守護者だもの…兄様は攻めないわね」「でも、私は許す気は無いわ!炎の柱!」「焔、炎よ!炎獄の炎よ!我は火炎の王妃ティンタル!我が名のもとに敵を灰燼に還せ!」炎獄の炎の柱…焼き尽くさんばかりの炎がセルトを包む「セルト殿!」「セ、セルト殿!」リュース公 とタルベリィが同時に叫んだ!

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